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地域から生えてきた
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2004(平成16)年、宮崎市内の住宅街の一画にある民家を借りて、「ホームホスピスかあさんの家」はスタートしました。その時に、今のように全国にホームホスピスが拡がることを予想した人は私を含めて一人もいなかったと思います。

         

「家に帰りたい人が『家』のような雰囲気で最後まで暮らせるところはありませんか」と相談が寄せられ、それまで研修会やホスピスボランティアを続けてきたホームホスピス宮崎の活動でしたが、そのニーズを受け取り、何とかせねばとまず『家』を探し始めました。丁度その時、一本の電話が入ります。「親父が心身とも不安定になり夜も騒ぐので、介護に疲れ途方に暮れています。もし親父の家が使えるのであれば、そこで父のケアをお願いできませんか」というものでした。 まずご近隣の方々にお話しする機会をつくりました。もともとそこにある家ですから、地域の方々にもお馴染みですし、地元の消防団ともつながりがあります。単に家を借りるだけでなく、それまで大家さんが培ってきた地域の信用も一緒についてきたのです。「ホームホスピスは地域から生えてきた」言われる所以です。そして何より民家は、庭やベランダがあり、風通しもよく、朝になると鳥の声が聞こえ、自然を五感で感じながら暮らすことができます。このような居心地の良い空間と環境を準備することはホームホスピスの基本条件であり、人が生きていくうえで欠かせない要素です。

         

ホスピスというと、わが国では、がんやエイズなどの末期にある方が、これられ以上病を治すことができないと言われて最期を過ごす場所だと捉えられていますが、ホームホスピスの意味は、決して最期を過ごす場所、看取りの場所ではありません。病気や障害を持ったり、老いたりすると、人はどうしても誰かのお世話にならなければ生活できなくなります。そんなとき、人はさまざまな苦悩を抱えます。ホスピスとは、その苦しみを和らげる場所「あなたはここにいていいですよ」と受け入れられて、日常の暮らしが守られ、命が守られるところです。ホームホスピスは、その環境の中で自らの内に生きようとする力(スピリチュアリティ)が発揮され、穏やかな人生の最終段階を迎える居場所であり、同時に人生をともに歩んできた家族が悔いのない看取りができる居場所だと考えています。

         

「ホームホスピス」の仕組みは、日本の医療・介護福祉等の制度の枠に入っていません。制度を利用するには条件があり、その条件からこぼれ落ちてどこにも行き場所のない人をも包括できる受け皿が必要でした。ならは、制度を超えて実践していこうと模索したのです。しかし、制度の枠に入っていかないがゆえに「似て非なるもの」が拡がる可能性がありました。そこで「ホームホスピス」を商標化し、その為により厳しい基準と自己評価の仕組みが必要だと考え、ケアの理念を共有して実践するための手引き「ホームホスピスの基準」を制定しました。2020(令和2年)年には、現在運営している人だけでなく、新たに開設しようとする人の道標ともなるように改定版をつくりました。

         

また、ホームホスピスの活動は、その家に暮らす住人にとどまらず、地域住人同士の交流の場や療育相談の場を設けたり、さまざま地域資源ともつながって地域活動を展開しています。高齢社会、多死社会を迎えた今、誰にも訪れる死とそれらのプロセスを覆い隠すことなく、コミュニティの中で共有する部分を増やしていくことで、差別をなくし、恐れを軽減し、誰もが生きやすい社会をつくる一助になると考えます。

 

この小さな活動が、タンポポの種のように風に乗って飛んで日本のどこかで芽生える。それぞれの風土に馴染んで育って次第に大きなムーブメントになり、それが同時に生きることを大切にする社会づくりにつながっていければいいなと願っています。

         

令和3年8月1日            
一般社団法人全国ホームホスピス協会理事長 市原 美穂

理事長市原美穂

理事長 市原 美穂

全国ホームホスピス協会
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